まごうことなき恋でしょう

 感情など持たないという、完璧な存在が私に覆い被さる。天井のなんとかでも数えていろ、なんて常套句は彼のようなひとが用いるべきではないだろう。なにしろ見えるものはその巨体ただひとつだ。恐ろしいほど発達した胸部に浮き出る木の根の如き血管を見つめていると、頬に手が添えられた。彼がその指をぴんと弾くだけで私の頭部は木っ端微塵になるはずだ。
 格、そして生物としても圧倒的な優位に立つ男が、なんともつまらない人間わたしの様子を窺っている。わたしは、この瞬間のどこかあどけない表情に惹かれたのかもしれなかった。
「ジャスティ、あなたずっとそうしたままキスのひとつもしないつもりなのかしら」
 思案。固く結ばれていた口元が、僅かに開いて閉じる。予行のように。
 それから暫くも待たないうちに、ジャスティスの唇がわたしの唇を覆い尽くした。重ね、吸いつかれ――慎重に加減されているはずの行為は、それでも痛みを伴う。訴えることはない。構わない。どうせすぐにもっと痛い思いをして、少しの後悔を味わいながら、彼の名をがむしゃらに叫び続けて満たされるのだから。
ざくろ。……私の、ざくろ。ああ、私のものだ。お前のことが、愛おしい」
「……っは、はは、ふ、ふふ……本当に?」
「ああ、きっと」
 ジャスティス、あなたの言葉が本当の感情でなくてもいい、空虚な真似事でもいい。
「お前を煩わせるものがあれば、私はそれを許しはしない。お前に触れるものがあれば、私はそれも許しはしない。この身が果てようと我が心はお前と共に在るだろう。……良いものだ、愛というものも」
 嬉しい。うれしい。わたしは、とてもうれしい。その言葉が、微笑みが、あなたからわたしに向けられている事実ただそれだけで!――いまここで死んでしまってもいいほどに。
 どうかしてるわ、最初はなっから。

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