
エクストリーム・サバイバル
不幸を嘆く自由すら、産まれてすぐに取り上げられた。
それからずっと、怒りと共に生きている。
褥を濡らす体液と共に漏れ出ていく理性が、女の自尊心を傷つけながら丁寧に意思を挫いていた。繰り返される行為の中で、諦念の二文字すら浮かんでいた。しかし。それでもまだ……柘榴にはまだ、憤怒という激情が残されていた。頭蓋の中から発される熱で五臓六腑が燃えている。握り締めた拳からは血が流れていて、男の側頭部に目掛けて打ち込んだはずのそれは、しかし、簡単に受け止められていた。
「ハッ、~~~っくそ、まだ……出る……ッッ」
――射精の瞬間なら或いは。
と、思っていたのだ。万全の状態では敵わなくとも、とも。柘榴は歯が軋む音を立てて男を――雷庵を睨み付けながら、その体を押し遣ろうとする。だが、触れれば触れるほど、呉一族の血に刻まれた本能がこの男を離すなと叫んでいた。嫌がらせのように抱き寄せられれば、膣壁が蠢動して挿入されたままの陰茎を締め付ける。それがまた、柘榴の憤怒を増大させる。猿轡さえなければ、屋敷中に彼女の罵声が轟いていたことだろう。
「盛大にハメ潮噴き散らかしたやつがする目かよ、それが。クカカカッ、ほんっと……飽きねェ女だよなあ」
柘榴と違い、雷庵は自由だった。
不自由したことなどただの一度も無い。食べたいものを食べ、したいことをして、気に食わないものは壊すか殺すかした。それが許される立場を存分に利用した。今もそうだ。誰に抱かれても相手を殺すものだから座敷牢に監禁されていた柘榴を引き摺り出しても一晩をかけ抱き潰そうとしても、誰も咎めなければ忠告すらしない。雷庵ならばいいだろう。うまいこと子を身籠もればいくら柘榴とて落ち着くだろう。そうでなくても産ませてしまえば、ようやく柘榴も一族の役割を全うできるというものだ。概ねそのように考えられているこの強姦に異を唱えるものは、柘榴を支え、共に生きてきた怒りのみである。
「俺を殺したいか?」
柘榴の瞳から溢れた涙を、雷庵の舌が掬い取った。
女は、後に語る。
「そのとき、生まれてはじめて、肯定されたんです。私の感情を、彼がはじめて、認めてくれた。私、はじめて、生きていてよかったと思えた」
だから本気で殺そうとしたのだと、満足そうに。