ホールド・ミー・メイビー

「興味深いな」
 そう言って何度か確かめるように頷くと、コーカサスマンはベッドに潜り込んできた。超人向けの強度で作られたものとはいえ、特注品というわけではない。その分厚さと頑丈さに見合った重みの鎧に身を包んだ彼の全体重を預けるには心許ない気にさせる――聞いたことのない音が鳴る。
 弁償するのは私じゃあないはずだけど。
 何かあったら超人委員会に駆け込めばいいんだろうけど。
 一瞬にして眠気から引き剥がされた私の頭を鼻歌交じりに撫で始めたコーカサスマンの鎧は血が通っているかのように温かく、素肌に与えられるには、それはあまりに過度な刺激にも思えた。何処で覚えたのか知らない流行りの歌。戯れにしても悪趣味な、なんとも超神らしい行いだ。
「……なにが興味深いって?」
「おぬしのそういったところよ」
「あー……つまり、腹立たしいとか、気に食わないとか、そういうのの反語として言ったの?」
「ペギペギ。余は言葉通り――いや、少しばかり違うか」
 と、コーカサスマンは手を止めて身動ぐ。
 まさか、まさか鎧のせいで落ち着ける場所が無いのだろうか。常在戦場と言えば聞こえも良いが、脱げばいいのに。
 こういった超人の習性は――彼の場合は超神だが――しばしば合理性を欠いて、たまたま身近に居る私のような人間を困惑させる。行動も、思考も、体の構造も、人間と似ているようでまるで違う。故に。
「余は……おぬしのことを、愛いと感じたのだ」
 こうして、よくわからないことも言う。
 ゆっくりと半身を起こしたコーカサスマンが、薄暗い部屋で仄かに光を放っていた金色の瞳を此方に向ける。
「共寝を望んだのは余だが――しかし、おぬしにとって命の危険が無いとも言い切れぬ。余の気まぐれなり誤りなりで簡単に死ぬのはわかっておろう。人間は超人よりもずっと脆く、対して余の力は強大だ。だというのに」
 コーカサスマンは溜め息を挟み、続ける。
「おぬしはまるで危機と思っていないではないか」
「……怯えるのがご希望なら他の子を呼ぶけど」
「待て、そうではない。そうではないのだ……」
 では、どういうつもりなのか――私は知っている。何度も、何度も、似たようなことを経験してきた。私のように脆弱なものに対する扱いがわからなくて、こうして勘違いする超人たちを。そして私は、決まってこう言うのだ。

「オプション、追加できますよ」

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