
KILLER
死と踊る姿は天使のようだった。画家に描かせれば数百年後も呪われた絵として賞賛を浴びるのだろう――描いた者に不幸があればもっといい。その者の血で描かせてやってもいい。解き放たれた衝動に身を任せて娼婦の柔らかな肢体をベハルへ捧げる彼の純血の子は、俺の価値観を僅かに揺さぶる。ベインが囁く。あれが欲しいと。俺も同じように思っている。
「……ゴータシュ、まだ居たのか?」
「ああ。お前を見ていた」
返答に納得していない顔で首を傾げたダークアージは、しかし追求することもなく短剣を執事に投げ渡す。受け取り損ねて落ちた指ごとすぐに消えるはずの執事は、俺を一瞥していった。ベハルが気にしているのか――まさか。ダークアージの信心は俺の目から見ても本物だ。この協力関係を結んだことで供物が減ったわけでもあるまい。望ましくないことが起きている?――いや、我々の計画は順調のはずだ。俺の個人的な道具が気に食わなかったのだとしても、踏み込んでくることはない。殺戮の神も不干渉の取り決めを破るほど愚かに出来ていない。
「見事だった。俺の趣味とは違うが、お前の技術には目を見張るものがある」
「そうか」
「言い方を変えよう。……美しかった。お前はいつも、俺の目を引き付けて離さない」
俺は微笑んで、血溜まりの中心へ歩み寄る。
ダークアージの冷たい瞳が、今だけは熱を帯びて俺を見つめ返す。癖になりそうな感覚だった。冷酷で残忍で、まるでヒトの情など一欠片も持ち合わせていないような存在が俺に返すその温度が、心の底から愛おしく感じてしまうほど。
「お前はベハルへ死を捧げ、俺はこの死を利用して新たな駒を得る。乾杯――俺たちの同盟に」
「我が父、ベハルに」
「……ベインの黒き手に」
使われることのなかったグラスへワインを注ぎ入れて差し出せば、ダークアージは疑いもせずにそれを飲んだ。尽くされることに慣れている。いつか薬でも仕込んでみようかと考えたことも過去にはあったが、俺はこの関係をちょっとした興味のために崩すような愚者ではないのだ。
「良い酒だ」
「ハッ――こんなもので満足されては困る」
俺たちはやがて世界に君臨するのだから。血に濡れた手を取り、口付ける。お前はその意味を知らない。きっと知らないままでいい。
見つめ合えばすぐにどちらのものかわからなくなるほど互いの熱が絡み合う。どうしようもなく欲しがっているのは俺だけだと思わせないでくれ。