ナイトメア・ワルツ

 確かめるように触れられる。首。頬。唇。
 貪るように噛み付かれる。首。頬。唇。
 ヨハンは――今夜はそう呼ばれたいらしい――あっという間に私をベッドへ押し倒すと、指先から生やした棘でストッキングを荒っぽく引き裂いた。傷付いた内腿から流れる血を舐め取る姿はひどく不気味で、見つめ返してくる瞳はいつにも増して鋭い。今日は朝から随分と厳しかった。最初からこうするのが目的だったなら合点がいく。普段は見逃してもらえるような些細なことまで指摘され続けて心も体も弱りきってしまっている、そんな私で遊びたいのだ。
「考え事とは、随分と余裕がある……」
 私が首を横に振れば、ヨハンは鼻先で笑う。秘所は既に暴かれていて、太い指が出入りするそこは未だに慣れない感覚へ反応して濡れていた。敏感な突起を擦られると息が詰まりそうになる。はやく終わらせてほしいと思えば思うほど長くなる行為だと知っていた。絶頂の手前で止められ、高められて、また期待を裏切られて、無意識に助けを求める口は塞がれる。
 絡め取られた舌。苦しいほど気持ちがいい、そんな体にされてしまった。逃れる術が無いことまで繰り返し教え込まれている体は私の意思に反して悲しいほど彼に従順で、ヨハンがもっと愉しめるようにと反応を返す。これでいい。これでいい。自分へ言い聞かせる。これでいい。彼に身を委ねて、なにも考えないで、考えたら、こわれてしまう。これでいい。
 ――――ほら、ヨハンも笑ってくれている。
柘榴
「っあ、は、……い。はい……」
「あなたはそうしているのがよく似合う」
「…………は、い」
「そしてとても、つまらない」
「はい……」
 そう言いながら、ヨハンの口元に浮かぶ笑みは絶えない。私は彼の所有物として生きている。こうしているのがよく似合う。彼のための血の通う人形として生きている。そしてとてもつまらない。だからはやく捨ててほしい。
「そんなあなたを、愛している」
 響かない言葉が何事も無く通り過ぎていく。私は踊り疲れている。

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