罪にも毒にも薬にも

 色素の薄い両眼と薄ら笑いが見下ろしてくる午前一時、二十分と、数分を過ぎた頃。私はまるで他人事のようにキドを見つめていて、彼は、自分の気持ちを言葉にする代わりに舌打ちをこぼし、続けて溜め息を吐いた。
 馬乗りになったままのキドはベッドサイドのペットボトルを取ると、馬乗りになられたままの私へ向かってその中身を注ぐ。ソラン・デ・カブラスの青色はぐしゃぐしゃに握り潰されて、空になった容器が投げられた先を私は知ることができない。放り投げたキド自身も知らないだろう。
 彼の視線は、私に向けられて逸れることがない。
「……そうだ。僕の名前入れようよ、ここに」
 キドは俄にそう言い出すと、私の喉から頚窩へ冷たい中指を滑らせて「どう?」と首を傾げる。否定も肯定もしないまま他人事のように見つめたままでいると、やがてキドは私の首を鷲掴みにした。否定も肯定もしないまま他人事のように見つめたままで居ると、それからキドはゆっくりとその手に力を込め始めた。
「……僕のものだと思ってたのに、僕の……」
 一体、なにを、言っているんだろう。
「僕の柘榴だった、今まで、ずっと、僕だけのものだった」
 他人事のように聞いている、他人事のように聞いていた私を睨みつけて、キドは「あの男は、なんなんだよ」と、首から離した手で今度は髪を掴んで揺さぶってくるのだから、私は思わず「やめて」と口に出し――「うるさい!」頬を打たれる。
 すぐに叩き返す。
 信じられないとでも言いたげに目を見開いたキドは、私が打った肩を押さえて唇を震わせる。そして、「柘榴」と名を呼んで、俯いて、私には聞こえない声で何事かを呟いていたかと思えば腕を広げて覆い被さってきた。
「わかったよ」――頭上でキドが笑う。
「君がそうしたいなら」――耳元でキドが笑う。
「これからこうして遊んであげる」――首元でキドが笑う。
 次の瞬間、キドは私の皮膚へ歯を突き立てた。せいぜい滲んだ程度の血を舐め上げて、彼は静かに笑っている。だから私は他人事のようにそれを受け入れて、こう言った。

「またお薬飲み忘れてるんでしょう、叔父さん」

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