サイケデリアと憂鬱

 飴でも食べていたのだろうか――仄かにレモンの味がする。
 そんなことを思いながら離れた途端、ザクロは紅潮した頬を隠すように腕で顔を覆った。額の生え際、汗で湿った産毛が寝ている。見られてしまうのが恥ずかしいとは何度も聞いたけれど、電気を消してほしいとは聞いたことがなかった。おかげで、可愛い顔以外をよく見ることができる。小振りの胸に手を這わせ、そのまま柔らかいお腹を撫でる。ほっそりとした脚に向かって腰を通った瞬間強張った体に、私の体を重ねた。どれくらい体重を乗せてもいいのかは、わかっている――少し息が苦しくなるくらいがザクロの好みだと知ったときは嬉しかった。私以外の誰も知らないザクロの秘密は、頭が痺れるほど刺激的だった。
「カリンちゃん、……なに、考えてるの」
「聞きたい?」
「いいよ。私のことって言うつもりでしょ?」
「……すごい」
 素直に感嘆した私を、ザクロは静かに笑った。
「部活動には役立たない勘だね」
 そうだろうか。と、私は首を傾げそうになりながらザクロの鼻先に口付ける。この時ばかりは大きく育つことができてよかったと思う。体格の差を楽しんでしまおうと私の腕の中に収めてしまえる体を抱き締めれば、ザクロは「くすぐったい」と身を捩って、それでも離れようとはしない。明るい部屋では、蕩けてしまいそうなほど熱いのに、いつまでも溶けてくっつこうとはしない肌と肌の境目がよくわかった。
「C&Cに入ればいいのに」
「私には向いてないよ」
「……メイド服だけでも着てみない?」
「まだ諦めてなかったんだ」
「それは……うん、絶対可愛いから……」
「カリンちゃんってさ――」
 一息吐いたザクロが、一度区切った言葉を続ける。
「たまに、おかしなとこがあるよね」
 そうだろうか。と、私は今度こそ首を傾げた。
 おかしなのはザクロの方だ。私には難しいことばかりを考えて、そしてそれをすべて隠してしまうのに。それなのに、限りなく明らかにしては私を困らせる。きっと誰も知らない――胤森ザクロが与える甘い蜜は、同時にとても苦いことを。

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