
READY FOR BURN
女性だから。人間だから。小さくて、とても弱いから。
すれ違いざま咄嗟に抱き寄せたほどキミが儚く見えた理由はきっとそれだけではなく、だからこそオレは、この体から離れなければならないというのに。キミの拳はオレの腕を叩いて、キミの脚は懸命に踏ん張って、離れようと足掻いて――――ああ、たったそれっぽっちの抵抗が精一杯なのかと、オレはもはや感動すら覚えている。
「キミを、連れ去ってしまいたい」
口を衝いて出たのは思いがけない、しかし、あまりにも理想的な言葉だった。
桜色のくちびるを僅かに開いて驚いたキミは、そのしぐさがより一層強く抱き締めたくなる原因なのだと知らないだろう。そうだ、キミはなにも知らない。そこが良かったのも確かだ。だが今は……これからは、可愛いだけで済ませられない。
「遥か遠く、……誰もわたしたちを知らない場所まで、キミを抱いて飛んでいきたい。わかっている。キミに婚約者が居ることも、キミとその幸せ者が心から愛しあっていることも、なにもかもすべてをだ!」
だがオレは理解しろとも言わない。
だからせめて、…………キミもわかってくれ。オレがキミと結ばれるには、こんな方法しか残されていないんだと。
「亡き妻の親友に恋をするのは、おかしなことか?」
ざくろはオレの腕の中で踠いている。無意味に。無抵抗の範疇から出られないまま、離してくれと訴えている。そういえばキミは昔からオレのことが嫌いだった。オレにとってのキミはもうその頬を伝っていく涙すら堪らなく愛しいひとだというのに。