罪悪の温床

ザクロ、ディクシアからの――私信だ」
「あら、ありがとう。忙しいのにごめんなさいね、あなたが届けに来てくれて嬉しいわ」
「姉の顔を見るだけのためにも言い訳が要る立場になってしまったものでな」
 冗談めかしてそう言えば嬉しそうに、……僅かに、寂しげな笑みを浮かべる。父どころか母さえ見せることのない曖昧な表情、一族の誰とも似ていない突然変異、この星の劣等種――それでもオレたちは、オレたちのどちらにも似ていない姉のことが大好きだった。
 姉は、両親から愛されているとは言い難い。
 産声を上げると同時に不義の子の疑いをかけられ、その問題が表向き解消されても異物として扱われることは避けられず、しかし。……しかし、彼女は身も心もうつくしく育った。間もなく生まれたオレたちのことを当たり前のように愛してくれた。アリステラもディクシアもなく慈しんでくれた。無償の愛とその眼差しはいつでもオレたちに等しく注がれていて、だからオレたちはザクロのことが大好きだった。
 だからオレたちは、ひとりの女を奪い合わなければいけなくなった。お互いに表立つようなことはしなかったが、オレたちの想いは同じだった。
 憎しみを受け継いできた血と魂を、宿命を抱える我が身を癒せるものは、この世にたったひとつしかない。
 ザクロだけだ。
 オレたちはザクロの他になにも知らないし、知る必要もなかった。
「アリステラ、食事を抜いたりはしていないのよね?」
「ああ」
「怪我や病気を隠していたりは?」
「まさか」
「それと、それと……しっかり眠れているの?」
「ああ、……ザクロ
 お前を愛している。オレたちは、お前を愛している。
「よかった。ディクシアも元気だといいのだけれど」
「姉さんに心配されていると知れば、無理をしてでも元気になるだろうさ」
「まあ。……無理はよくないわ」
「そうだった」
 お前に愛されたい。オレだけを、愛してほしい。
 遠い星に想いを馳せるザクロの横顔。その体を抱き寄せてしまいたかった。小さく、か細く、偉大な姉よ。血に塗れる定めにある我が手に残るものは、貴女だけでいい。

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