
泣いて縋れ喚いて愛せ
「ど、どうしたの、いきなり」
終末の話を真に受けた人間――そんなバカは見たことないが――のような顔をして、柘榴は手元の花束とおれを交互に見た。信じられないと言われるまでもなく、おれですらそう思っている。
しかし此処に来るまでに受けた好奇の視線への苛立ちが不思議と治まるのを感じながら、おれは「らしくねえだろ」と先んじて言ってやった。
「まあ……そうね?」
素直に頷いた柘榴は、花の匂いを嗅いで「まったくだわ。なにか疚しいことでもあるの?」と、可笑しそうに目を細める。
暗殺でメシを食っておいて今更なにを恥じて縮こまらなきゃならんのだマヌケとは思ったものの、これ以上は無いほどの笑顔を向けられて「でも、とっても嬉しい」なんて言われたものだから、途端に黙るしかなくなった。
「デーボ、ありがとう」
「……ああ」
おれが花なんぞを買ってみたのは、ただの気まぐれに他ならない。恨みを溜めすぎた仕事の後で、ほんの少しイかれたからというだけの気まぐれだ。そんなもので喜ぶな。こんな、誰にでも出来ることで喜ばれちゃ――無性に腹が立ってくる。
「柘榴」
「ん、どうしたの。もうあたしのものなんだから、返せって言われてもあげないんですから」
恨めしい。……恨めしくなる。『エボニーデビル』の力ではない、おれの手で、おれと同じだけズタズタにして誰にも見向きされないようにしたくなる。
なあ柘榴。
そっちの方が、おれらしいとは思わねえか。
「それにしても。あなたにも恋人を可愛がろうって気持ちがあったのね、デーボ」
そうみたいだな。
本当に、そうしてやりたいもんだよ――