
君か、それ以外か
いっそ緊張感を和らげてくれそうなほどけただましい銃声がぴたりと止んで、どちらかが消えたことを知った。どちらにせよ、冷凍庫に閉じ込められた直後の私にとって安心できる理由にはならなかった。内側からは開かない扉を前に細く息を吐けば、それだけで唇が凍る場所だった。真っ暗闇の心細さに泣き出してしまったら目蓋も凍り付くのかもしれないと思って、監視カメラすら置かれない場所でひっそりと、最後になるかもしれない息を吸い込むのは、とても、とてもこわかった。
壁際で膝を抱える私の体を、壊れた窓から吹き抜けてきた風が撫でる。
今なら何があっても、何が起きても、暗くないなら、冷たくないなら、それだけでよかった。
「ザクロ」
だから。
だから私の名を呼ぶその声に――救われたいと願った。
男の手が再び私の手を取る。彼の、エイデンの眼差しは、どこまでも果てしなく続く道のように途方も無いもので出来ているように思う。いつも。いつも。いつも、その眼差しが私を見つめ、迷わせる。額には布越しの唇が重ねられて、……きっと、喜ぶべきなのに。
「…………冷たいな」
怒りを滲ませた声音と、胸の中へ引き寄せる優しさの狭間で、私は怯えていた。包み込まれた手は確かな温もりを感じながら、感情ははっきりとした恐怖へと形を変えて私の指先を震わせる。まだ暗い。まだ、冷たい。此処は寒くて、私は凍り付いたままで、一人では何処にも行けないことだけがわかって、エイデンの腕は力強く私を抱いた。
「冷たい。……悪かった。巻き込むつもりは、いや……こうなることはわかっていたんだ。だが、…………」
「エイデン」
「なんだ?」
「助けてくれて、ありがとう」
今この時にも罰するべき罪を探すあなたは――――こうなることがわかっていて、いったい、どれだけ殺したのだろう。私一人のためだけに、人を人とも思えずに。
「エイデン、……ありがとう」
閉じた瞼の裏側で闇の色を見比べる。徐々に激しくなっていくエイデンの鼓動へ、そっと耳を傾けながら。