
ふたりで星に名を付けて
喜怒哀楽を隠さないのは、故意なのだろうか。
いいや、なのだろう。
でなければ、あの男も落ちるところまで落ちたということだ――最初から程度など知れていたものだけれど。こうして内心で見下していようが、唯一の寄る辺に誘われるまま身を寄せた愚かさへの対価は支払わなければいけなかった。裏切るには身が危うく、手を切るには遅い段階で顔を出してきた不安材料と相対しても、だ。
手持ち無沙汰なそれに、ウォーターサーバーから注いだ冷水を差し出した。恵まれすぎた体躯には小さすぎた椅子は私のお気に入りのもので、うっかり潰れて台無しになりやしないかと少しだけ心配になる。依然として窮屈そうに収まる様をじっと見ながら、彼――相沢聖人の正面に腰掛けた。
「…………」
「…………」
「……はあ」
何も言わず、故に、何も言われず。
私は愛飲する煙草に火を付けて、甘味と香ばしさに瞼を閉じて浸る。そして煙を吐き出しながら、もう一度聖人を見つめた。どこからどう見ても“器”じゃあない。それでも、私にはこの男を支えるしか道が無いのだ。
避難先を見つけたようにグラスを握る姿形、憤りを湛えた表情。父親に似ていないところだけが私と似ている。
「腹違い……数ヶ月違いの、姉弟らしい」
「…………え?」
「私も聞いて驚いた。こうして会って、また驚いた。血の繋がりというのは不思議なものだね……初めて見るはずのお前のことがよくわかる。そして、可愛く思えてもいる。お前は私をどう思うのか知らないけど」
煙草の煙が充満していた。僅かな息苦しさの中で、お前の怒りが伝わってくる。それでもなにかがわかるわけじゃない。わかるはずがない。なにかがかわるわけでもない。かわらなければならない。そう、今ここで何もしなければ――
「……その気があるなら、その気になるなら。オヤジに命令されたからっていうのは忘れて、本気で協力してもいい」
ねえ。目障りなやつが居るでしょう。居るはずだ。
ねえ。言いたいことを言ってやりたいでしょう。
夢を叶えるのがあいつらだけなんて、ずるいじゃないか。
「信じ、」
「信じられなくても、きょうだいだよ」
あいざわまさと、おまえは、わたしの弟だ。
半分だけ。半分も。私とお前には同じ血が流れている。たったそれだけの理由で構わなかった。不満をぶちまけたくないか。不公平だって言ってやろうよ。殴って、蹴って、わからせてやろうよ。だって私、ずっと我慢してた。まるで自分が世界の中心だとでも思ってそうなあいつらが憎い。だって私たち――夢を見ることさえできやしない。
「まさと」
きっとお前は頷いて、私を姉と呼んでくれるね。