背比べなんてばかみたい

「おチビちゃん」
 と、オレを呼びつける女を見上げる。そのままではろくに声が届かないからと座らせてやった自販機の上で立ち上がってくすくすと笑うそいつを自販機ごと裂いてやるのは簡単だったが、こんなに弱いやつをちょっとした苛立ちのために殺すのも癪なのでやめておいた。肩のタイヤで少しばかり小突けば「うわっ」なんて間抜けな声を上げてしゃがみ込むのだから、挑発なんざ最初からするんじゃねえと呆れそうになったが、こうして呑気に生きているのが不思議なほど弱いやつがこうして生きてしまっていることに、オレは少しばかりの感銘を受けているのでやめておいてやった。
「バルル――オレを見下ろす気分はどうだった?」
「悪くはなかったけど、想像以上のものでもなかったね」
「なんだ。つまらねえ感想だな」
 もっと感激するなりすれば可愛げもあるし、物足りないとでも我儘を言うならオレなりの考えだってあったというのに。ありえた選択肢を奥歯で噛み潰しながら柘榴の顔に手を伸ばし、薄い皮膚の頬を慎重に包むように挟む。
 悪くはない。想像以上のものでもない。
 打って変わって不機嫌にオレを睨みつけるおまえが見られたことには、想像を僅かに上回る心地を覚える。オレの勝ちだ。と、こころのうちで呟いた。

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