不具合イイ具合

 ロイスの趣味は理解に苦しむ。
 メガビル解体現場の只中に置かれたような“騒音”はインプラントへ遠慮無しにべたべたと触れるように響いて、メタルとメタルの繋ぎ目は不愉快にビリビリと共鳴する。生身の部分まで震えてくるような感覚に、Vは吐き気を催しながらソファへ座り直した。
 ちょっとやそっとじゃ死なない特別製の肉体(純粋な肉かどうかは少し怪しい)であっても、銃弾の当たり所が悪ければ不具合も起きる。そこへこの拷問じみた音楽だ。ああ、きっとそのせいだ。
 Vは頭を掻く振りをしながら耳朶の裏側に触れてイかれた集音機能を一旦切ると、先程から何やら喚いていた男――ダム・ダムの声を拾えるだけの耳に調節してからニコーラを呷った。油断できるような場所なら迷わず死ぬほどアルコールを入れてた。と、甘ったるい息を吐き切る。
「だからよぉ!」
 やっとはっきり聞こえた男の声は、やけに愉しげだ。
「お前の肌にはこれがイイ。顎の先から腹の中心まで繋がるように埋め込んじまうんだ――ンン、いや、もっと下までか?」
「やめろ。俺の趣味じゃない」
「お前の意見は聞いてねえよ」
「ああそうだな、そうだった。……ンなとこじゃ会話もクソもないがな」
「クソなら便所でやれよ」
「……あーもう。うるせえな」
 しかし、ダム・ダムと連むのだけは悪くない――当たり所が悪すぎたか、どうだか。

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